<排煙緩和告示の事例検討>
2014年度末に改正された排煙告示緩和については〈排煙緩和告示(屋外への出口のある居室)〉で説明しましたが,告示追加条文(1)(2)に適合する部分がその階に混在している場合の扱いが複雑ですから,事例を想定してその適用を解説します。
<事例1>
その建物全体としては排煙設置要件でない場合で,50分の1の開口部がないために排煙設置を必要とする居室が複数あり,一部の居室が告示追加条文(1)(2)に適合し,一部が適合せず仕上げ不燃下地不燃(排煙告示第4号二(4)号)で排煙設備設置を免除した。
上記になる事例として,平屋の400㎡の事務所を想定します。室としては,玄関ホール,廊下,事務倉庫があり,居室は3つで,居室Aは50分の1の窓がとれていて,居室Bは50分の1の窓がないため告示追加条文(1)(2)に適合する屋外への出口があり,居室Cは50分の1の窓がないため仕上げ不燃下地不燃にするとします。
この場合の排煙規定の適用は次の通りです。
- 建物全体としては排煙規準の適用を受けない
- 居室は50分の1開口検討をしなければいけないので,3つの居室については検討し,窓がある居室Aは排煙規定の適用を受けない
- 窓がない居室Bと居室Cは排煙規定の適用を受ける
ここからがこの事例の検討です。
居室BCともに仕上げ不燃下地不燃であれば告示追加条文を使うまでもなく現行告示で適合します。居室BCともに告示追加条文(1)(2)に適合する場合から考えましょう。告示追加条文(1)(2)に適合する部分と適合しない部分とが混在する場合の規定が柱書のカッコ書きですから,それ以外のすべての部分,つまり,玄関ホール,廊下,事務倉庫,居室Aがカッコ書きに適合していなければいけないとも読めます。でも,そんなことはありません。排煙規定の適用を受けているのは,もともと居室Bと居室Cだけですから,それ以外の部分は存在していません。つまり,玄関ホールなどについて排煙を検討する必要はないのです。
次に,問題のBが告示追加条文(1)(2)に適合し,Cが仕上げ不燃下地不燃だった場合です。Bは適合部分ですからそれ以外といえばCです。Cがカッコ書きで列記された条項に適合していますから,この事例は全体として排煙規定に適合しているのです。
<事例2>
その建物全体としては排煙設置要件がある場合で,避難階に複数の居室が複数あり,一部の居室が告示追加条文(1)(2)に適合し,一部が自然排煙などを設置した居室がある。
上記になる事例として,3階建て1200㎡の事務所を想定します。1階の避難階は400㎡で,室として玄関ホール,階段,廊下,事務書庫があり,居室は3つで,居室Aは窓で排煙設備としての自然排煙がとれていて,居室Bは自然排煙がとれないため告示追加条文(1)(2)に適合する屋外への出口があり,居室Cは自然排煙がとれないため仕上げ不燃下地不燃にするとします。
建物全体として排煙設備設置ですから,玄関と廊下は別々に自然排煙,階段は令第126条の2第1項第3号による免除,事務書庫は防煙壁区画(排煙告示第4号二(2)号)とします。
この場合の排煙規定の適用は次の通りです。
- 建物全体として排煙設置義務が生じている
- 居室Bさえなければ,現行の排煙規準に適合している
で,告示追加条文を利用して屋外への出口を設けた居室をどう考えるかです。その前に,避難階の3つの居室ABCが3つとも告示追加条文(1)(2)に適合する出口が設けられている場合は,その階全体として告示追加条文に適合しているのですから避難階全体が排煙規定免除となります。つまり,玄関ホールも廊下も排煙規定がかかりません。
で,問題の混在する場合です。居室Bだけ見れば告示追加条文(1)(2)を満たしていますが,それは避難階の居室の一部でしかありませんから,ロ号柱書のカッコ書きを読まなければいけません。居室B以外が柱書のカッコ書きの条文に適合していなければいけないのですが,この例の場合,居室Aと玄関ホールと廊下が自然排煙になっていて適合していません。
結果として,事例2は適合しないとなります。
参考までに,居室Aを仕上げ不燃下地不燃にして,玄関ホールと廊下を防煙壁区画(排煙告示第4号二(2)号)にすれば適合します。
<事例2の結論について>
さて,上記の<事例2>の結論である「混在する場合に,それ以外の部分に自然排煙があっては適用できない」って,納得できませんね。
そもそも,それ以外の部分がどれかの規定を利用して排煙規定に適合しているのは当然のことであって,なぜ,適合させる条文を列記する必要があったのかと思います。それは,列記しなかったものを排除するため,つまり,自然排煙などの令第126条の2本文で設置した排煙設備と第1項第4号の機械製作工場を排除するためなのですが,これらだけが排除されなければならない理由がわかりません。
ただし書きの読み方として,「令第126条の2本文で自然排煙などを設置したところは,ただし書きを読むにあたってもともと読む必要がない」というのは,あるんでしょうか。
「そのようにでも読まない限りつじつまが合わない」というのと
「条文を読む限りそのようには読めない」というのとのせめぎあいです。
自然排煙が混在した場合に認められるのか認められないのか。ここより先は私にはわかりません。
※自然排煙があるとこの告示を適用できないとしか読めないことの解説は〈排煙緩和告示(屋外への出口のある居室)Q&A〉です。
<排煙緩和告示の関連情報>
〈排煙緩和告示(屋外への出口のある居室)〉
〈排煙緩和告示(屋外への出口のある居室)Q&A〉
〈排煙緩和告示の事例検討〉
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<自然排煙が混在する場合>
自然排煙が混在する場合の適用は「パブリックコメント」の答えとして示されています。5ページ目に廊下が自然排煙である場合に区画が必要かとの問いに,必要ないとの回答になっています。質問はすべての居室が適合する場合ですから,廊下部分も排煙設備が免除されるので免除される部分に任意で自然排煙があったからといって法令違反にならないという見解です。<事例2>で示したような一部の居室が適合する場合とは違います。
ただ,このパブリックコメントの存在からしても作法担当者は,自然排煙が混在した場合に排除するなどということを意図しなかったのであろうことは想像できます。
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このページの公開年月日:2015年7月18日