排煙告示(屋外への出口のある居室)Q&A

<排煙緩和告示(屋外への出口のある居室)Q&A>

平成27年3月17日に改正施行されている排煙告示については〈排煙緩和告示(屋外への出口のある居室)〉で法文を紹介しましたが,なかなかにわかりにくい表現になっています。この改正告示を読む上でわかりにくいところを個人意見として解説します。

疑問1:(1)で限定した適用用途の表現で「児童福祉施設等(入所する者の使用するものを除く)」とはどういうことか

個人意見:「児童福祉施設」とは,児童福祉法第7条の児童福祉施設を言いまして,例えば一般的な保育所が該当しますし,児童発達支援センターや情緒障害児短期治療施設などが含まれています。「児童福祉施設」の中には有料老人ホームや障害者支援施設を含みます(参考:〈児童福祉施設等の定義〉)。で,「入所する者の使用するものを除く」ですが,どの施設も使用する人がいるから成り立っているのですから,「入所する者の使用するもの(施設)を除いて」しまったら全部除かれてしまうような気がします。児童福祉施設等のうちで「入所して利用する施設」と「入所せずに利用する施設」にわかれているということでしょうか。 実はそれが正解で,建築基準法施行令第19条第2項の書き方を見ても入所する者と通う者とを区別しています。 国土交通省の答えは,パブリックコメントの結果に示されていまして,「児童福祉施設等のうち,保育所や老人デイサービスセンター,母子保護施設,地域活動支援センター等の通所施設を想定しております」だそうです。この答えも実は疑問があって, 「除かれるものを答えたのか,該当するものを答えたのか」 どっちなんだろうかと思います。質問と答えをよく見ると該当するものを答えたのだということがわかります。

疑問2:「容易に道に避難することができる出口」って何?

個人意見:パブリックコメントの結果の中に「目安として10m程度」などの条件が示されていますが,それが基準であるならば告示の中に記述すべきものです。基準に「程度」などというものがあっていいのかとも思います。条文上は「容易に避難できればいい」のですから20mでも容易に避難できるとして設計する設計者が出てくるかもしれません。

【技術的助言の抜粋】居室の各部分から屋外への出口まで及び屋外への出口から道までの避難上支障がないものとして必要な要件

①居室の各部分から屋外への出口までの歩行距離が一定程度以下(目安として居室の床面積100㎡程度を想定し10m程度)であること

②戸や掃き出し窓である等居室内の在館者が開口部を通じ屋外へ支障なく出られること

③屋外への出口から道に直接通ずるか、道に通ずる幅員50㎝以上(当該幅員は有効幅員)の通路その他の空地が設けられていること

④他の火災のおそれのある居室の前を通らずに避難できること

疑問3:「(1)の用途に供する部分における主たる用途に供する各居室に屋外への出口等が設けられている」 各居室ってことは,主たる居室の全部に出口がなければいけないってこと?

個人意見:この告示は,出口のある居室ごとに適用するのではなく,その階全体で適用することを想定しているようです。(1)で適用できる用途を制限して(例えばオフィスビル),そのすべての居室(主たる用途の居室)に出口が設けられている場合に,その用途の部分(オフィスビル)のその階(避難階)全体を排煙規定を適用除外にするものです。適用除外は,出口のある居室だけに適用するのではなく,(1)で適用した用途全体に及びますから,廊下や非居室も排煙規定が適用除外となります。 一方で,避難階の居室で出口のある居室と出口のない居室があった場合のこの告示の適用はどうなるのでしょうか。疑問4と疑問5で解説します。

疑問4:「次に掲げる基準に適合する部分」の後ろのカッコ書きは何? 次に掲げる基準のみが適用されるのであって,カッコ書きは法文上無効なのでは?

個人意見:後ろのカッコ書きは,(1)(2)に適合する部分がその階の一部だった時の規定です。前段と後段に分かれていて,前段は,適合する部分以外のすべての部分が適合していなければいけない条項を列記したもので,後段は「床壁もしくは防火戸で区画されていること」です。後段は区画ですからわかりやすいですが,前段はわかりにくいです。疑問5で解説します。 カッコ書きで書いたことが法文上無効なのかということについては,カッコ書きも「部分」を限定する役割をはたしますから有効です。ただ,カッコ書きも基準そのものですから,カッコ書きで「・・場合に限る」とするのではなく,カッコ書きの条文を(3)として記述すればよかったと思います。

疑問5:「適合部分以外の建築物のすべての部分が令第126条の2第1項第1号から第3号までのいずれか,前各号に掲げるもののいずれか若しくはイ及びハからホまでのいずれかに該当する場合または適合部分と適合部分以外の建築物の部分とが準耐火構造の床若しくは壁若しくは同条第2項に規定する防火設備で区画されている場合に限る。」の条項を列記している部分(下線部)の意味は何?

個人意見:カッコ書きの条文は,その階に適合部分((1)(2)に適合する部分)と適合しない部分とが混在した場合の扱いを規定したもので末尾の「限る」で限定していますからこれを満たしていない場合はロ項が適用できない,つまり,排煙緩和ができないというものです。 適合部分以外の部分のあるべき姿を規定したものです。「以外のすべて」といってもロ項のカッコ書きですから対象としている階,例えば避難階のみを指しています。 カッコ書きの条文は「または」で前段と後段に分かれていて,後段は床壁防火戸による区画ですから特に疑問はありません。問題は前段の条項を列記した部分です。まず,カッコ書きの前段で勘違いしやすい文面がありますね。 「イ及びハからホまでのいずれかに該当する」これは,「イに該当するおよびハ,ニ,ホのいずれかに該当する」ではないようです。「イからホまでのいずれか」と書きたかったところですがロは除かないといけないのでそのように記述したもののようです。 カッコ書き前段で並べている条項は,令第126条の2第1項ただし書きで排煙設備設置を免除している条項のほとんどです。つまり,「適合する部分以外の部分が排煙設備設置を免除される状態になっていればいい」という規定です。ロ項の(1)(2)に適合しない部分は,当然に排煙規定に適合していなければいけないのですからカッコ書き前段で並べている条項に適合しているのは当然です。ですが,「ならば,何のためにこれを規定したのか」ですよね。答えは,カッコ書き前段で並べた条項は排煙設備設置を免除している条項の全部ではないからです。そもそも,令第126条の2の本則で自然排煙の排煙窓(や機械排煙)を設置したものが除かれています。もうひとつ除かれているのが令第126条の2第1項第4号の機械製作工場です。なぜこのふたつを除く必要があったのか私にはわかりません。

告示追加条文(1)(2)に適合する部分がその階に混在している場合の扱いが複雑ですから,事例を想定してその適用を解説します。〈排煙緩和告示の事例検討

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疑問3の補足

疑問3で「その階全体で適用することを想定しているようです。」としましたが,「~ようです」について補足します。その階(避難階)の複数の居室のすべてに出口があって改正告示の(1)(2)に適合している場合に,その階全体が排煙規定に適合しているというものです。これを断定形ではなく「~ようです」としたのは,私自身,本当にそのように読めるのかについて自信がないからです。なぜ,「想定しているようです」と言えるのかについて説明しますと,技術的助言に「~すべての居室が,~について,排煙設備の設置を不要とする」と書いてあるから,これをもってその階全体(廊下などを含めて)が適用除外とするからです。ただ,この技術的助言の読み方もその階全体を指すのか,出口を設けた複数の居室を指すのか断定できないとは思っています。

次に,「告示の文面で,本当にそのように読めるのか」について説明します。「次に掲げる基準に適合する部分」の前にある「避難階又は~」を優先的に読んだのでしょう。(2)の基準に適合する居室がその階のすべてだった場合,「基準に適合する部分」は「その階全体なんだ」と読むことにしよう,ということなのでしょう。説明になっていないとは思いますがお許しください。

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このページの公開年月日:2015年7月18日