<2014年度施行の基準法改正>
2014年度に建築基準法で改正のあった5つについて解説します。
- 寄宿舎の界壁でスプリンクラーを設置した場合は免除
- せっこうボードによる耐火構造の追加
- 排煙緩和告示の改正
- エレベーターの昇降路部分の面積不算入(容積率において)
- 小学校の児童用の階段の寸法緩和
<1.寄宿舎の界壁でスプリンクラーを設置した場合は免除>
施行令第112条第2項と同第114条第2項の間仕切壁について,自動スプリンクラーを設置した場合や小規模で避難が極めて容易な構造の場合は緩和されることの改正が行われています。国土交通省のパンフレットはこちらです。
<2.せっこうボードによる耐火構造の追加>
せっこうボードによる壁の耐火構造の追加が告示改正で行われています。「耐火構造の構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1399号)」が平成26年8月22日に改正されて同日施行されています。
追加されたのは,
間仕切壁では,
① 強化せっこうボードを2枚以上張ったもので,その厚さの合計が42mm以上のもの
② 強化せっこうボードを2枚以上張ったもので,その厚さの合計が36mm以上のものの上に厚さが8mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板を張ったもの
外壁では,
上記①②の屋外側に金属板などを張ったもの
この改正は,これまで個別認定だったものを告示で一般指定にしたものです。そして,下地が木材でも適用できることが特徴です。
強化せっこうボードについては成分の条件がついていて,それに適合するものは,
① NM-8615「強化せっこうボード」のうちGB-F(V)(ひる石入り)
② NM-1498「両面薬剤処理ボード用原紙張/せっこう板」のうち,せっこう,ガラス繊維及びひる石の含有率が適合するもの
となっています。
また,せっこうボードの止めつけ方法は,「準耐火建築物の防火設計指針」(日本建築センター平成6年)「石膏ボードハンドブック」(石膏ボード工業会平成24年)に書いてあります。
※ 上記内容は,国住指発第1785号平成26年8月22日の技術的助言による
<3.排煙緩和告示の改正>
排煙告示の平成12年建設省告示第1436号が平成27年3月18日に改正され同日施行されています。
この改正で,特殊建築物でない用途で,直接に屋外に出ることができてそのまま道まで避難できる居室については排煙設備設置が免除されています。告示には距離の制限は規定されていませんが,同時に出された国住指発第4784号平成27年3月18日の技術的助言で居室内の歩行距離は10m以内が目安であることや出口から道までの通路についても留意事項として示されています。この改正告示の解説は下です。
<4.エレベーターの昇降路部分の面積不算入(容積率において)>
2014年7月1日施行で,容積率制限を適用する上での床面積にエレベーターの昇降路部分の面積は参入しなくてもいいことになりました。
根拠条文は,法第52条第6項と政令第136条の16です。
法第52条第6項:第1項~~に規定する建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には,政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は,算入しないものとする。
施行令第135条の16:法第52条第6項の政令で定める昇降機は,エレベーターとする。
ここで「エレベーター」は政令第129条の3第1項第1号で定義されるものを言いますから,第3号で定義される小荷物専用昇降機の昇降路は面積不算入の対象にはなっていません。
<5.小学校の児童用の階段の寸法緩和>
平成26年7月1日施行で政令第23条に第4項が追加されて,小学校の児童用の階段のけあげ寸法が緩和されています。具体の緩和条件はH26告示第709号で規定されています。
政令第23条第4項 第1項の規定は,同項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる階段については適用しない。
H26告示第709号では,けあげ寸法を18センチに緩和するかわりに,階段の両側に手すりを設けることと踏面の表面を滑りにくい材料で仕上げることが規定されています。中学校を小学校に用途変更することや小学校と中学校を併設することが増えていますから,中学生用の階段でも適合できるようにしたものと思われます。
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<小規模物置の取り扱い>
法改正ではありませんが,小規模な物置(例えば,ヨド物置)は建築物に該当しないことが技術的助言で示されています。「小規模な倉庫の建築基準法上の取扱いについて(技術的助言)」(平成27年2月27日)です。これによれば,人が中に入らず,扉の外に立って内容物を出し入れするものについては建築物ではないとしています。
<専ら防災のために設ける備蓄倉庫>
防災倉庫の用途規制上(法第48条)の取り扱いが技術的助言として示されています。「専ら防災のために設ける備蓄倉庫(技術的助言)」(平成27年2月27日)です。第一種低層住居専用地域においても建築可能です。
<最近の法改正の関連情報>
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<昇降路の床面積>
昇降路の床面積算入の原則は,すべての階で算入することです。その階に開口部がなくて停止しない階は算入する必要がありませんが,停止する階はすべて昇降路の大きさの床があるものとして算入します。
ここからは個人的な感覚でしかありませんが,すべての階で床面積算入することは不合理だと思います。昇降路の中にエレベーターの籠は通常1つしかなくて,10階建てでも使っている床は1階分しかないからです。
昇降路の床面積は,最下階で昇降路分の面積を計上し,籠の床面積を1つだけ加えることの方が合理的だと思います。この時,籠の床面積を何階で計上するのかのルールが必要ですから,「避難階に停止している」または「最上階に停止している」などのルールを決めておかなければいけません。
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このページの公開年月日:2015年5月18日