令第137条の2第2号2分の1増築

<増築における法第20条の既存不適格の扱い(令第137条の2第2号2分の1増築)>

法第20条について既存不適格になっている建築物を増築する場合に,既存不適格を継続できる条件は,法第86条の7第1項〈既存不適格が継続する小規模な増築工事〉と,その第1項を具体的に示した政令第137条の2〈増築における法第20条の既存不適格の扱い〉で規定されています。

この政令第137条の2は,増築する規模に応じて,

第1号:規模制限なし〈第1号規模制限なし

第2号:既存建物の2分の1以下の増築

第3号:既存建物の20分の1(50㎡を超える場合は50㎡)以下の増築〈第3号小規模増築

に分かれて規定されています。

このページでは,第2号を説明します。


第2号は増築に係る部分の床面積の合計が基準時の既存部分の床面積の2分の1以下という条件がついています。そして,守るべき構造方法は,

イ  耐久性等関係規定に適合し,かつ,自重,積載荷重,積雪荷重,風圧,土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃による当該建築物の倒壊及び崩落,屋根ふき材,特定天井,外装材及び屋外に面する帳壁の脱落並びにエレベーターの籠の落下及びエスカレーターの脱落のおそれがないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものであること。

ロ  第3章第1節から第7節の2まで(第36条及び第38条第2項から第4項までを除く。)の規定に適合し,かつ,その基礎の補強について国土交通大臣が定める基準に適合するものであること(法第20条第1項第四号に掲げる建築物である場合に限る。)。

ハ  前号に定める基準に適合するものであること。

のいずれかです。

ロは,法第20条第1項第四号に限定した規定で,構造計算は不要だが,仕様規定の基礎以外について現行法適用で基礎については緩和されているとはいうもののH17告示第566号第4に適合させなければいけません。個人意見ですが,四号ですから構造計算が不要なのは当然のことで,木造の壁量や金物規定が適用されますから,建物全体を現行法に適合させていることとほとんどかわりない状態と考えます。

イは,まず「耐久性関係規定」への適合が条件で,H17告示第566号第3への適合も求められます。この告示の条件が複雑です。

小規模木造建築については,EXP.Jで分離してもしなくてもあまり変わりませんから,分離しない場合に適用される基準を整理しました。下表です。

法第20条第1項第四号の木造建築物(EXP.Jで分離しない増築の場合)(増築面積が既存の2分の1以下
適用される条文
増築部分 構造の仕様規定(令第3章のうち第8節(構造計算)以外)
既存部分 耐久性関係規定,

令第42条,令第43条,令第46条

小規模木造建築物の場合,EXP.Jで分離しても既存部分に令第46条の壁量規定が適用されますから,分離することの意味はあまりないと思います。現行の令第46条が適用されるのですから,壁量のバランス規定も検討が必要で,一方,令第47条が外されていますから既存部分に金物補強は適用されません。増築部分には必要です。

ロにはカッコ書きで「法第20条第1項第4号に掲げる建築物に限る」がありますから,「ロが4号もので,イがそれ以外だ」と思われがちですが,イでも4号ものの緩和はあって,イでの緩和の方が広いです。

小規模木造建築以外であれば,増築部分をEXP.Jで分離する場合が多いですから,その場合に増築部分と既存部分に適用される基準を整理しました。令第137条の2第2号イの後段はH17告示第566号第3への適合を求めるものです。具体には下表です。

小規模木造建築物以外の建築物(EXP.Jで分離した増築の場合)(増築面積が既存の2分の1以下
適用される条文
増築部分 構造の仕様規定(令第3章のうち第8節(構造計算)以外),

第8節の構造計算(令第82条第4号のみ適用されない)

既存部分 耐久性関係規定,

地震力については,H18告示第185号の基準(耐震診断など)〈既存部分に適用される耐震診断など〉,

地震力以外については,令第82条第1号から第3号,

建築設備については,H17告示第566号第1第1号,

屋根ふき材などについては,同告示第1第2号

法第20条で構造計算を必要とする建築物をEXP.Jで分離して増築する場合には,その増築部分については現行法が適用されるのですが,なぜか,令第82条第4号(梁や床などの振動制限)は適用されていません。新しく工事をするのですから,この検討を外して設計する建築士はいないとは思いますが,法令上は義務付けられてはいません。

増築部分に適用される構造計算は,増築部分が平屋の200㎡以下でそれ単独で見れば法第6条第1項第4号ものであったとしても,必要です。

既存部分については,「耐久性関係規定+耐震診断(耐震補強)」と呼ばれますが,長期荷重や風荷重などについて現行法での検討が必要です。通常は,風荷重では決まりませんから風荷重の検討は省略していますし,長期荷重について,当初設計と変わっていないことをもって省略しています。したがって,大スパンで風荷重が影響するような建物では既存部分の風荷重の検討が必要ですし,当初設計から荷重条件が変化している建物では長期荷重の検討も必要です。

既存部分に適用される耐震診断については〈既存部分に適用される耐震診断など〉で説明します。

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国土交通大臣が定める基準

H17告示第566号

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このページの公開年月日:2016年6月19日