3 建築基準法の関連法令

<3 建築基準法の関連法令>

ここでは,建築基準法の関連法令を紹介します。

<1.建築基準関係規定>

提出した確認申請書(基準法第6条)は,記載されている計画が基準に適合しているかどうかが建築主事によって審査されます。この判定の基準になるものは,建築基準法とその政令・省令・告示・県条例・県規則・県告示という〈1 建築基準法の法体系〉で紹介した法体系となりますが,それだけではありません。法第6条第1項からリンクして政令第9条各号にかかげられるものも審査の対象となります。これらを〈建築基準関係規定〉と言い,消防法第9条,屋外広告物法第3条から第5条などがそれにあたります。

建築基準関係規定〉で解説しています。

<2.確認申請書の受理要件である建築士資格は建築士法>

法第6条第3項に,設計者に資格を要する場合の確認申請において資格要件が違法であるときには申請書を受理してはならないことになっています。

一級建築士,二級建築士,木造建築士の設計によらなければならない建築物の規模は,それぞれ建築士法第3条,第3条の2,第3条の3に規定されています。大きな建築物に小規模な増築をする場合に資格をどのように適用するのかがしばしば問題になりますが,第3条第二項に増築する部分のみでもって適用することが規定されています。

建築士でなければできない業務〉で解説しています。

構造設計一級建築士と設備設計一級建築士の関与が義務付けられる建築物の規模は,それぞれ建築士法第20条の2,第20条の3です。これらの条文には,構造設計一級建築士等が設計(または関与)した場合の表示義務が定められているだけですが,表示のないものは建築基準法第6条第三項によってその申請書を受理してはならないことになっています。

構造設計一級建築士,設備設計一級建築士でなければできない業務〉で解説しています。

参考】法第6条の確認申請の審査にあたって,設計者の資格要件である建築士法第3条などは審査対象(受理要件)ではありますが,1.の「建築基準関係規定」ではありません。

<3.手数料根拠は自治体の手数料条例>

平成11年以前の建築基準法には政令に確認申請手数料の額が定められていましたが,自治事務なのだから地方で定めるべきだとの考え方で政令から消されています。現在は,__県手数料条例で徴収する根拠を定めています。したがって,手数料を納付せずに申請することは,建築基準法上の違反ではありませんが,手数料条例違反となり,手数料を納付しない申請は受理されません。

<4.基準法の条文から直接に関連付けられた他法令>

法第2条の用語の定義の中に「都市計画」などの用語の根拠を都市計画法などに求めています。

また,昭和44年告示第3184号で指定される日本産業規格JIS A 3302による人員算定基準,平成12年告示第1425号で指定される日本産業規格JIS A 4201による避雷設備の構造方法が,建築基準法から関連します。法第37条で指定建築材料の品質を日本産業規格(JIS)・日本農林規格(JAS)への適合を定めているので,これも関連しています。これらの日本産業規格・日本農林規格は,〈1 建築基準法の法体系〉から直接リンクするものです。したがって,日本産業規格JISA3302に適合しない浄化槽を新築中の建築物に設置しようとする行為は,法体系のリンクをさかのぼって出発点となる建築基準法第31条に反する違法行為となります。

<5.他法令による建築基準法第6条の適用除外>

高齢者,身体障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」第17条に,「建築物移動等円滑化誘導基準(←義務基準である建築物移動等円滑化基準よりも上の規準)」に適合するものとして計画の認定申請を提出する場合には,建築基準法第6条の確認申請を免除することができるとされています。具体的には,「特定建築物」について同法第17条第1項の認定申請に同条第4項により確認申請書を添付して提出すれば,所管行政庁は同法の建築物移動等円滑化誘導基準への適合とともに建築基準法の適合も審査することになっています。建築基準法第6条が適用除外になったといっても,申請者は確認申請書を作って提出することには変わりありません。提出先が建築主事ではなく所管行政庁に変わっただけです。この制度化当初は,認定申請手数料が無料だったため,ただで確認申請を提出できるというメリットがありましたが,平成21年4月1日から有料化されました。

建築物の耐震改修の促進に関する法律」第17条第3項により同法の耐震改修に係る基準に適合するものとして計画の認定を受けた場合には,建築基準法第6条の確認申請手続が免除されることになっています。免除できることの根拠は,同法第17条第10項です。免除されたといっても耐震改修の計画の認定申請には,確認申請の必要図書を添付する義務がありますから,申請者は確認申請書を作って提出することには変わりありません。提出先が建築主事ではなく所管行政庁に変わっただけです。これを受理した所管行政庁(つまり,県等)は,同法第17条第4項を根拠として建築主事の同意を得ることになっているので,ここで建築主事が基準法に関する審査をします。

<6.他法令による建築基準法第6条手続きの付加>

土砂災害警戒区域等における土砂災害防止の推進に関する法律」は,建築基準関係規定ではありませんが,同法第25条に同法の「特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)」内の居室を有する建築物(建築基準法第6条第1項第一号から第三号を除く)について同区域を基準法第6条第1項第4号の指定区域とみなすと規定されており,確認申請手続が必要です。構造方法は基準法施行令第80条の3に規定されています。令第80条の3が適用されるのは,同条に書いてある通り「特別警戒区域内の居室を有する建築物」です。

「特別警戒区域」の外側にそれよりは緩い「警戒区域(いわゆるイエローゾーン)」が指定されていますが,これについては,建築基準法との法制度上の関連はありません。ただ,宅地の安全性について疑問が想定されることを別の法律で行政が宣言しているのですから,建築基準法第19条との関連は考えなければいけませんし,がけ等の形状によっては,県条例のいわゆる崖条例の適用もあり得ます。

参考】「特別警戒区域,警戒区域」の指定根拠には,「急傾斜地の崩壊」と「土石流」と「地滑り」によるものとがある。

<7.港湾法による用途規制の適用除外>

港湾法第39条で臨港地区内の分区を指定した地域においては,同法第58条により建築基準法第48条第49条の用途規制が適用除外されます。建築基準法では,規制が外されることが読み取れないのですが,他法令である港湾法で勝手に除外しています。

基準法の用途規制を適用除外した結果,港湾法に基づく分区条例により建物の規制が適用され手続きが必要とまります。規制根拠は港湾法第40条であり,審査対象法令になっているから,建築主事は分区条例への適合を審査しなければいけません。具体の審査は,港湾担当部局がしているので,建築主事の審査は分区条例による手続きが適正に行われているかどうかでもって行います。平成19年の改正法で,「港湾法に適合していることの確認に必要な図書」の添付が義務付けられています。

<8.他法令による建築基準法の用語の定義>

法第18条で国や都道府県の建物は法第6条の確認申請手続を免除され,第18条の計画通知の手続に変わります。ここまではいいのですが,国等が設立した公益法人が申請者の場合に,確認申請手続(第6条)となるのか計画通知手続(第18条)になるのかは,基準法には規定されていません。かつては,建築基準法質疑応答集に例示してありましたが,応答集の例示は法的に効力はありませんでした。そこで,今はその公益法人の設立根拠となった法律で規定されています。例えば,平成16年度から独立行政法人化された旧国立大学であれば,国立大学法人法第37条と同法施行令第22条で国とみなして建築基準法第18条を適用することが定められています。

「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」第3条第1項の規定によって指定された「急傾斜地崩壊区域」はそのまま基準法第39条の「災害危険区域」になります。そうなることの根拠は,__県建築基準法施行条例で同一の区域とする旨が定められているからです。その結果,急傾斜地崩壊危険区域(=災害危険区域)内では,基準法第39条第2項に基づいて定められた県条例の制限が適用され,居住用建物の建築が原則禁じられるとともに,建築したい場合は,県条例の認定申請による認定を必要とします。

<9.手続きにおける他機関との連携>

建築基準法第93条により,提出された確認申請書(許可申請書も同様)は,戸建て住宅など小規模なものを除いて消防署長へ送られることになっています。除かれる小規模なものとは,同条第一項ただし書きと政令第147条の3に規定されています。

また,「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」の特定建築物(同法第2条第1項)に該当する場合は,法第93条第5項に,建築主事から保健所長へ申請された確認通知書を通知することが定められています。この法律は通知を定められているだけで,審査の対象ではありません。

確認申請書に浄化槽設置届が添付されている場合は,保健所に送付されますがこれはそれぞれの自治体で定めていることであって,基準法上ではその定めはありません。


以上が,建築基準法の基準や手続きについて関連している他法令です。こんなにたくさんの法律が関連しています。

このページの公開年月日:2011年9月1日(最終更新:2021年4月7日)