<建築関係事件事故後の対応とコンプライアンス>
平成28年度第2回建研塾
テーマ:建築関係事件事故後の対応とコンプライアンス
-構造計算書偽装事件,マンション杭未到達事件などを例として-
講師:_ _ _
開催日時:平成29年1月28日(土)10時30分~12時
開催場所:下見福祉会館(東広島市西条町下見)
主催者:広島県建築士会東広島支部〈開催通知〉
テーマの趣旨
テーマ:「建築関係事件事故後の対応とコンプライアンス」
例えば,11年前の構造計算書偽装事件 ← これは,ひとりの不適切な建築士がした不正行為
↓
社会全体に大きな衝撃を与えた
設計システム全体の信頼回復が必要。
↓
抜本的な法制度改革
法適用の厳格化。審査の強化,構造基準適合性判定制度の創設。
↓
事件・事故は,当事者のみの問題にはとどまらない。
一般の建築士も同種の不正をしていないことの説明が必要
その後の制度改正(規制強化)への対応が必要
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あまりにも厳格化が厳しすぎたため,国全体のGDPを押し下げるほどの影響を与えた。
※このテーマでは,建築基準法が地震などの災害を含めて事件・事故のたびに強化され続けてきた歴史とともに,事件・事故の後の対応を振り返って,一般の建築士がすべき説明責任とともに法令順守ついて考える。
謝辞
ご来場への感謝,主催者への感謝。講師自ら希望して登壇させてもらった。
講師自己紹介
普段は建築行政の仕事。今日は個人の立場。
建築行政への研究を少しだけ手がけた。→〈研究活動実績〉
建築基準法の強化の歴史
建築基準法は,昭和25年に施行され,その後たびたび改正されて強化され続けている。
それは,地震を含む災害の発生や,事件事故のたびに改正されてきた歴史でもある。
右の写真は,昭和45年と平成28年の建築基準法を並べたもの。
構造計算書偽装事件
2005年11月17日の国土交通省発表は社会に衝撃を与えた。「構造計算書偽装事件」
もっとも強度の低いマンションで,必要強度の0.15(マイナス85%)しかなかった。
個人の不適切設計だが,設計システム全体の信用回復が必要であり,厳格化の法改正が行われた。
マンション杭未到達事件
横浜のマンションで,不同沈下が見られた。原因を解明する中で,杭が支持地盤に到達していない,施工記録が改ざんされていたという不適切な事項が発見され,事業者側の負担で全棟を建て替えることになった。
朱鷺メッセ連絡橋崩落事件
連絡橋が地震もなく強風も吹かないのに自重で崩落した。
一般建築士がとるべき説明責任そして法令順守
「コンプライアンス」とは。→ 「法令順守」
近年,あまりにも厳しい目が向けられるようになった。
構造計算書偽装事件では,不正設計をしたA建築士が処罰されることは当然だが,不正設計を最初に見つけた審査機関を指定取り消し処分した。
杭未到達事件では,不同沈下でしかないものを「傾いたマンション」と報道された。
「アカウンタビリティー」とは。→「説明責任」
法令順守とともに説明責任が重要になっている。
法令順守していることをどう説明するか。
朱鷺メッセでは,構造設計者が自費で引張実験して自らの正当性を証明。建築雑誌に投稿。ホームページ上で公開。
こうした状況に,一般の建築士はどうするのか。
法令順守と説明責任は表裏一体のもの。
ここから先,通常の法令順守研修では「知らなかったでは許されません!」みたいな流れになるけど,私はそうした精神論を述べられるような人物ではないので言わない。
説明責任は求められる。自分が当事者になった場合はもちろん。当事者でなくても,構造計算書で事件が起きれば構造計算について,杭で事件が起きれば杭について,他人が起こした事件で自分の設計が安全であることの説明が求められる。
ここからは,フリートークで「法令順守」「説明責任」についてみなさんと議論したいです。
構造計算書偽装事件についてどんなことを感じて,どんな思い出がありますか。
改正法への対応で苦労した思い出もあるでしょう。
「法令順守はわかっている」とはいえ,気づいていない基準があって焦ったことはありませんか。
法令を遵守していることを説明できますか。
朱鷺メッセの構造設計者が自費で実験までして自分の責任を証明していますが,私たち普通の建築士がどこまでできるでしょうか。
基準を守るのは当然とはいえ,なぜ守らねばならないのか説明しにくい基準もありますね。
[ckchouritsu1]
このページの公開年月日:2017年1月23日