<孔内水平載荷試験>
「孔内水平積荷試験」は,ボーリングで掘った孔内で,その側壁に圧力をかけて変形を測定することです。この試験により,その位置の地盤の変形係数などを求めることができます。
「孔内水平積荷試験」のやり方は,社団法人地盤工学会のJGS1421で定められています。
「敷地調査共通仕様書」によれば,孔内水平積荷試験には,A型(等分布荷重1室),B型(等分布荷重3室),C型(等分布変位)の3種類があり,通常はA型またはB型を用いることになっています。孔内水平積荷試験を実施する場合のボーリングの孔径については,A型は86㎜であり,B型は66㎜であることが示されています(4.4.4(d))。とはいえ,A型で60㎜のものもあります。
また,孔壁の崩落が予想される場合はケーシングチューブを挿入して保護しながら行います(4.2.2(b)(3))。
通常,地盤の緩いところで孔内水平積荷試験を行いますから,孔壁の崩落が予想されます。ケーシングチューブがなくても試験はできますが,加圧の際に上から孔壁が崩れて,試験機が抜けなくなるという事態が起きますので,通常ケーシングチューブは必要です。B型で試験をする場合,孔径66㎜でボーリングしますが,その外側に86㎜のケーシングチューブをすることになります。したがって,GL-4mのところで孔内水平積荷試験をする場合,GL-3.5mまで86㎜のケーシングチューブを挿入しながら掘削して,あと1mを66㎜でボーリングしてその孔壁へ試験機を入れて試験を実施することになります。
孔内水平積荷試験は,社団法人地盤工学会のJGS1421によって行われて,結果の整理も同基準と測定器が指定する方法で行われますから,建築士が計測のやり方や結果整理に立ち入る必要はありません。
建築士がかかわるのは,水平積荷試験によって得られるデータを活用することです。この試験で得られるデータは次のものです。
- 静止土圧 P0(kN/m2)
- 降伏圧 Py(kN/m2)
- 破壊圧 PL(kN/m2)
- 地盤係数 Km(kN/m3)
- 変形係数 E(kN/m2)
- (K値を求めた中間半径)
これらのデータをどのように使うかは,「作成中」ということにしておきます。
孔内水平積荷試験を行う時によく議論になるのが,それを実施する深さです。
「支持層深さの3分の1か4分の1程度の深さで実施する」と聞いたことがあります。そうであることがどこに書いてあるのだろうかと調べてみたのですが,「敷地調査共通仕様書」「『建築工事監理指針(平成22年版)』(国土交通省官庁営繕部監修)の下巻の24章」「『標準積算基準書(土木工事関係)』の『第3編 地質調査業務』」「地盤調査の方法と解説(社団法人地盤工学会)」の中には調査深さの推奨位置は示されていません。
優等生的答えとしては,「地盤の状況と孔内水平積荷試験の目的によって適切な深さで行う」というのが正解なのでしょう。
支持層より上にある軟弱地盤が複数あってそれぞれ性状が異なると思われるときはそれぞれの層でするのがもっとも丁寧な調査ですが,もっとも軟弱と思われる1か所で実施することが効率的です。支持層より上の軟弱地盤がほぼ均質である場合は,どこでやっても同じなのですが,孔内水平積荷試験の目的は,例えば「杭の水平抵抗力の推定」ですから,杭に水平力を発現させる層である,3分の1から4分の1というのは当たっているんだと思います。
支持層より上の軟弱地盤がほぼ均質である場合で,孔内水平積荷試験を実施する深さとして,私の感覚で推奨するとすれば,
- 支持層がGL-10mの場合 ⇒ GL-3m
- 支持層がGL-15mの場合 ⇒ GL-4m
という程度だと思います。ですが,このあたりから建築士の必要知識から外れてくるんだと思います。地盤調査は地盤調査の専門家がいますから,その人と相談して決めることになるでしょう。
上記は,支持層より上の軟弱地盤が均質だった場合のことで,通常はそうではありませんから,孔内水平積荷試験をどこで(何mの深さで)行うかは,とても難しい判断になります。それは,
- 標準貫入試験を実施すると,その周りの土が乱されますので,その位置で水平積荷試験をすることができない
- 孔壁の崩落の危険性があるので試験をするところよりも上の部分にはケーシングチューブを必要とする
からです。したがって,1mごとに標準貫入試験をして掘り終った孔で,「GL-5mのところがもっともN値が低い軟弱層だからGL-5mのところでやりたい」と思っても,GL-5mのところは標準貫入試験をして土を乱していますから,その孔で孔内水平積荷試験をすることができないのです。
特定の軟弱層を狙い撃ちにして孔内水平積荷試験を行いたい場合には,
① まず,1mごとに標準貫入試験をしながらボーリングする
その結果,もっともN値が低くて軟弱な地盤がGL-5mのところだったとすると,
② そばにもう一本,ボーリングしてGL-5mのところで水平積荷試験をする
というようにします。
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<地盤調査の関連情報>
〈地盤調査〉
└〈孔内水平載荷試験〉
└〈平板載荷試験〉
<地盤の液状化の関連情報>
<積算>
孔内水平積荷試験を行う場合,孔径の積算は,86㎜でするのでしょうか,66㎜でするのでしょうか。
B型を用いた場合,試験自体は66㎜でできますが,その上の部分では86㎜のケーシングをして保護しなければいけません。ですから,試験をするところより上は86㎜で積算しなければいけないような気がしますが,実態としては66㎜で行われているようです。それは,ケーシング自体は,孔内水平積荷試験を行わなかったとしても孔壁の上の方は必要なことで,通常,そのケーシングは計上しなくても掘削費用に含まれているものとされているからです。
<参考情報>
〈標準貫入試験を実施したところで水平積荷試験をするのはいけないのか〉
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このページの公開年月日:2012年9月