<倉庫の面積区画>
数千㎡の倉庫の面積区画について解説します。
倉庫の床面積が1000㎡を超える場合は,法第26条で1000㎡ごとに防火壁での区画が適用されます。これが基本ですが,同条第1号を使って,耐火建築物が準耐火建築物にすることでその適用を外すことができます。
そして,倉庫の床面積が1500㎡を超える場合は,法第27条第3項の規定により準耐火建築物(または耐火建築物)にしなければいけません。「準耐火建築物」とは法第2条第九号の三で定義されていますから(延焼ライン内の開口部を措置した上で),
同号イ号:主要構造部を準耐火構造にしたもの
同号ロ号:政令で定める技術基準に適合するもの,つまり
令第109条の3第一号(いわゆる外壁耐火の準耐火建築物)
令第109条の3第二号(いわゆる柱はり不燃の準耐火建築物)
とすることです。まず,準耐火建築物ですから法第26条の防火壁の適用はありません。でも,令第112条の防火区画が適用されます。上記3種類の準耐火建築物(耐火建築物も含む)のどれにしたかによって令第112条の第1項(1500㎡区画)が適用されるか,第4項(500㎡区画)が適用されるか,第5項(1000㎡区画)が適用されるかが分かれます。
耐火建築物:第1項(1500㎡区画)
下記以外の準耐火建築物:第4項(500㎡区画)
いわゆる柱はり不燃の準耐火建築物:第5項(1000㎡区画)
となりますので,倉庫のほとんどは柱はり不燃の準耐火建築物で設計しますから1500㎡を超える倉庫は,令第112条第5項によって1000㎡区画が必要になります。
上記を見ただけで,倉庫の区画の適用の複雑さが見えます。
1000㎡から1500㎡の倉庫であれば準耐火建築物にすることで1000㎡の区画が免除されるのに,1500㎡をちょっと超える倉庫は準耐火建築物が義務適用でそのうちの柱はり不燃の準耐火建築物にすると1500ではなく1000㎡で区画を必要としてしまうのです。
さらに難しくしているのが,適用除外の扱いです。
第1項には,
第1項第1号:劇場,映画館,演芸場,観覧場,公会堂又は集会場の客席,体育館,工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分
とあり,
第4項・第5項の適用除外として,第6項で,
第6項第1号:体育館,工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分
とありまして,一見,倉庫とは関係ないように思えますが,実は,建設省住宅局長通達(昭和44年3月3日付け住指発第26号)で,
なお,本条第1項ただし書及び第4項に規定する用途に供する建築物には,倉庫及び荷さばき施設(荷役機械を除く。)が含まれるものとする。
とされているのです。
ここまでを見て「なーんだ,倉庫は112条の区画の適用除外なんだ」と,思ってはいけません。工場の区画でも,工場だからそのすべてが適用除外なのではなく,天井走行クレーンがあって一体空間であることの必要性から区画できない部分が適用除外されるのであって,工場のその他の部分とは区画を必要とします。
第1項のただし書きは,
令第112条第1項ただし書き:次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。
とありまして,これは,「いずれかに該当する部分」であり,かつ,「用途上やむを得ない場合」に適用除外とされるということですから,「倉庫は,体育館,工場その他これらに類する用途に含まれるものである」といっただけではだめで,「用途上やむを得ない場合」でなければ,適用除外にはなりません。倉庫の場合は,通常天井走行クレーンなどがありませんから,区画できない場合には該当しませんし,特に可燃物を含む場合には火災荷重が大きくなりますから「用途上やむを得ない場合」にはならないことが多いでしょう。
【参考】〈巨大物流倉庫の火災と面積区画〉
[ckckaisetsu1]
<関連情報>
〈住宅用防災機器〉
〈指定建築材料〉
〈倉庫の面積区画〉
〈鋼杭の法適用〉
〈各主要構造部の構造方法(耐火構造・防火構造・不燃材など)〉
[chouritsulink]
[ckckaisetsu2]
このページの公開年月日:2020年5月31日