屋根の構造方法(類焼防止性能・屋根不燃)

<屋根の構造方法(類焼防止性能・屋根不燃)>

市街地で火災が生じると火の粉が隣の建物の屋根に落ちて類焼して次々に燃え広がっていきます。ですから屋根が燃えない材料であることは市街地火災を防止する上で重要です。市街地における屋根の不燃性能を規定した条文が法第22条と第63条でこれがなかなかに難解な表現になっています。

求める性能は4種類にわかれていて,「定義」「性能に関する技術的規準」「条文指定の構造方法」「個別認定の構造方法」を一覧表にすると次のようになります。

定義 性能に関する技術的規準【主な値】 条文指定の構造方法 個別認定の構造方法【認定番号の冒頭】
防火地域・準防火地域内の屋根構造 法第63条 令第136条の2の2各号【市街地火災で有害な発炎をしない,かつ,内部までの溶融・亀裂を生じない】 2000告示第1365号第一 各社の認定【DR】
令第136条の2の2第1号【市街地火災で不燃性物品保管倉庫などの用途限定で有害な発炎をしない】 2000告示第1365号第二 同上【DW】
22条指定地域内の屋根構造 法第22条第1項 令第109条の5各号【有害な発炎をしない,かつ,内部までの溶融・亀裂を生じない】 2000告示第1361号第一(実は,2000告示第1365号第一のこと) 同上【UR】
令第109条の5第1号【不燃性物品保管倉庫などの用途限定で有害な発炎をしない】 2000告示第1361号第二(実は,2000告示第1365号第二のこと) 同上【UW】

※ 「条文指定の構造方法」「個別認定の構造方法」という法律用語はない。

屋根構造は,4種類に分かれていて複雑です。

古い話をしますと,2000年より前の建築基準法では法第22条は「屋根は,不燃材料で造るか,または葺かなければならない」と規定していました。陶器瓦は不燃材ですから瓦で葺くというわかりやすい規定だったのですが,「仕様書規定から性能規定へ」の流れの中で法文の記述が変わりました。法第22条指定区域内の建物の屋根は今でも基本は不燃材ですが,「不燃材で葺け」という規定にたどり着くだけであちこちの条文をたどらなければとどりつけなくなっています。


まずは,第22条指定区域内の建物の屋根は不燃材料で葺くことの条文のたどりかたを説明します。

法第22条第1項 屋根の構造は,通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので,国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

この条文の「屋根の構造」を規定している部分は「国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの」のところだけです。前者が条文指定で後者が個別認定です。「不燃材で葺け」の規定は前者ですから,「国土交通大臣が定めた構造方法」を定めたH12告示第1361号を見ます。

H12告示第1361号 建築基準法第63条に規定する屋根の構造とすることとする。

ですから,法第63条を見ます。

法第63条 防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根の構造は,市街地における火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので,国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

この条文の「屋根の構造」を規定している部分は「国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの」のところだけです。前者が条文指定で後者が個別認定です。目的の規定は前者でして,「国土交通大臣が定めた構造方法」を定めたH12告示第1365号を見ます。

H12告示第1365号第1第一号 不燃材料で造るか,または葺くこと。

となって,告示の「不燃材料で葺く」にたどり着きました。

上記の条文のたどり方は,必要なところだけを一直線に行ったもので,本当は,「政令で定める技術的基準に適合するもので」の部分を読まなければいけません。加えて,法第22条の規定は建物用途を限定しない規定と不燃性物品の保管倉庫に限定した規定にわかれますから区別して読み進まなければいけません。ですから,この条文を読み解くことが複雑なのです。

屋根の規定が法第22条と第63条にわかれていますから混乱します。違いは屋根に求める性能の規定の中で想定する火災が,

法第22条:通常の火災

法第63条:市街地における火災

であることです。どっちが大規模な火災なのかは法文には書いていませんが,「市街地における火災」の方が大規模なんでしょう。

ただ,条文で指定される構造方法は,第22条のものも第63条のものもたどりつく先がH12告示第1365号ですから,同じです。つまり,条文で指定される構造方法(いわゆる仕様書的規定)では第22条も第63条も同じです。

そして次のことが,さらに混乱させるかもしれませんが,個別認定ではなぜか,第22条の認定と第63条の認定を区別しています。複雑でしょ。

このページの冒頭の表の下に「屋根構造は,4種類に分かれていて複雑です。」と書いています。ですが,条文指定の構造方法では,第22条と第63条が一致していますから2種類です。その2種類を解説します。

建物の用途に制限のないものとあるものにわかれて,屋根以外の主要構造部の制限の有無,屋根の構造制限が規定されています。表にすると次の通りです。

建物の用途 屋根以外の主要構造部の制限 屋根の構造
限定なし 制限なし 【H12告示第1365号】
次のいずれか
・不燃材料で造るか,葺く
・準耐火構造(屋外の面を準不燃材料)とする
・耐火構造(屋外の面を準不燃材料)に外断熱をしてシート防水をしたもの
【令第109条の6,令第136条の2の2】
・不燃性物品を保管する倉庫
【H12告示第1434号】
・スケート場,水泳場など
・不燃性物品を取り扱う荷捌き場
・畜舎など
【日本建築行政会議発表】
・テニスの練習場,ゲートボール場等
・通路,アーケード,休憩所
・十分に外気に開放された停留所,自動車車庫(床面積が30㎡以下のものに限る),自転車置場
・機械製作工場
準不燃材料 上記の構造もしくは,
・難燃材料で造るか,葺く

※ 上記は条文を簡略化して書いている。正確には条文を読んでください。

※ 上記の建築行政会議発表は,例えば「22条区域内における建築物の屋根(LIXILHP)」で見ることができます。

法第22条と第63条で屋根に求められる性能(簡単に言えば不燃材で葺くということなのですが)上記のようにとても複雑なので〈屋根の類焼防止性能・屋根不燃の適用事例・考え方の整理〉にまとめました。

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