清田区里塚地区の液状化の原因についての考察【続編】

前の投稿〉で,里塚地区で液状化したことの原因として「団地造成の前からあった旧36号線が堰堤となって地下水が抜けにくくなって地下水位が浅くなっていたことが液状化を引き起こす原因になったのではないか」ということを書いています。これは,下図のように,

団地の盛り土が液状化したもので,造成工事で暗渠にした三里川の施工や盛り土の地下水の排水処理が適切にできていたかに注目する内容として書いています。

この考え方とは異なる知見が,10月18日付けで「ジャパンホームシールド㈱」から報告されています。同社HP上で公開されていまして「北海道胆振東部地震における現地被害調査結果について」です。団地造成をする前にあった農地の地面が緩い砂質の火山灰質土であることが示されており,その部分が液状化したことを示唆しています。

団地を造成した時の盛り土が液状化した

造成する以前にあった農地の地盤が液状化した

これがどちらであるかで原因の分析は変わってきますが,ジャパンホームシールドの報告は,現地調査に基づいているのですから,どちらを信じるかといっても答えは明白です。以下は,「もともとの農地の地盤が液状化した」という前提で原因を考察してみます。

前の投稿〉で,「三里川の出口からみて旧36号線のすぐ南側の敷地が液状化しなかった」ことを疑問としてあげていますが,上記報告によればそのあたりはわずかな切土であることが図解されています。旧36号線付近の地形は,下図のように

北側から丘陵地,南側から丘陵地がせまっていて,旧36号線のところで谷が狭くなっていたように思えます。以下は想像ですが,造成前の農地となっていた部分は,旧36号線地点でボトルネックになっていますからここでせき止められるようにして堆積したのではないでしょうか。

つまり,その堆積土は,旧36号線のところでは浅く,上流のところは深くなっていたのでしょう。堆積土の浅いところは液状化せず(だから旧36号線付近は液状化しなかった),深いところがこの地震によって液状化したのではないでしょうか。

このように考えると,団地の造成でもっと深い盛り土のところがあったにもかかわらず液状化しなかったことの説明もできます。液状化したのは造成前の農地を構成する地盤なのですから宅地造成の盛り土の深さには影響されません。むしろ,盛り土が少ない方が液状化を抑える効果が少なくなりますから液状化しやすいということになります。

液状化は,砂質土であることと地中水位が高いことの2つの要因によって生じるものですが,もともとの農地の火山灰質土は,もともとの三里川よりも低いところにあるのですから,その部分が地下水で満たされているのも当然のことで,より液状化しやすい状態です。三里川の暗渠排水工事が適切であろうともその下の地下水を排水することはできません。

団地を造成した時の盛り土が液状化した

造成する以前にあった農地の地盤が液状化した

どちらであるかは重要で,後者であると考えた方が多くの点で辻褄の合うことと思われます。

清田区里塚地区の液状化の原因についての考察

<清田区里塚地区の液状化の原因についての考察>

北海道胆振東部地震により,札幌市清田区里塚地区で液状化が発生し公園や道路を含む多くの住宅が被害を受けました。

地盤の液状化は,砂質土で地下水位が浅いところが強い地震を受けたときに起きるものです。原因は学術的に分析されていますから,里塚地区で液状化が生じたのは「発生する条件になっていたから液状化した」ということになるのですが,私が気になっているのは,「里塚地区のこの場所がなぜ液状化の条件を満たしたところだったのか」です。

場所は,北広島市から札幌市へ伸びる国道36号線の旧道で北東側にこぶのように湾曲したところの内側になります。液状化したところは,例えば北海道新聞の次の記事「陥没被害の清田・里塚,札幌市作成「盛土造成地マップ」載らず」か北海道建設新聞社の「清田区里塚の被害甚大」で見ることができます。

で,液状化の原因として現在語られているものとしてはテレ朝ニュースの記事で「札幌市内の液状化は複合的な要因が原因」と日刊建設工業新聞の記事で「地盤災害緊急報告会開く」があります。この記事で語られているのは「谷筋を埋め立てた盛り土だったこと」「雨による地下水位の上昇が影響した」です。その原因は液状化する条件を満たすもので,それ自体は正しいのですが,雨は石狩平野の全域で降ったものですし,谷筋を埋め立てて盛土した団地はその近くにもたくさんあるので,「なぜその場所だけが液状化したのか」の答えにはなっていません。

そこで,私なりに,この原因を考えてみました。

液状化したのは上の図(国土地理院HPより利用)のところです。

1971年の航空写真(国土地理院HPより利用)では,この場所は,田んぼ(畑?)であったことがわかります。

発災当初には「川を埋め立てたところが液状化した」と報道されていましたが,小さな川があったのでしょうけど,河川を廃線したところが液状化したのではありません。この辺りの地形は,なだらかな丘陵地で液状化したところを含んで南西から北東へ伸びる農地の部分が谷筋になっていたところです。団地を造成するに当たって,南東側の森林の部分の土を切り取って農地部分の谷筋を埋め立てたものと思われます。

「谷筋を埋め立てたから液状化した」のであれば,この程度の盛り土はどこの団地でもあることですし,「陥没被害の清田・里塚,札幌市作成「盛土造成地マップ」載らず」で示されているようにこの近くにももっと大規模は盛り土がありますが,そのすべてが液状化したのではないことが説明できません。

で,私が考える液状化の理由は,

「旧36号線が堰堤となって団地の地下水を溜めこむ役割をした」です。

上図のように,旧36号線は三里川をまたぐように作られていました。団地が造成される前は旧36号線の下のトンネル(暗渠)を三里川は流れていて,それ自体は今も変わっていません。旧36号線の足元に川の出口が今もあります。旧36号線の南側で造成したことによって川としての形はなくなって,農地だったところ全体を盛り土したのですが,団地の地表に降る雨は水路などで排水しているのですが,盛り土の地下水は旧36号線の下のトンネル以外には出口がないのですから,相当流れにくい状態だったと思われます。地下水を旧36号線がせき止める形になっていて水位が高くなっていたことが液状化の要因だと思います。

上の模式図のように,団地の盛り土よりも前にあった旧36号線が堰堤のようになって地下水をせき止めていたのだと思います。

これが答えだとすると,今回液状化したところよりももっと旧36号線側が液状化しなかったのはなぜか,という疑問が生じます。ここは,実は団地が造成される以前から宅地化されていたところで,宅地化された期間の長さと盛り土の土質の違い(粘土成分が多かった?)で液状化を免れたのだと思います。

<上記の考察に何の意味があるのか>

9月24日時点で,液状化の原因についてHP上で検索して,「旧36号線が地下水をせき止める役割をした」と指摘するものが見当たらなかったので,私の個人意見をここに入れてみました。

ただ単に「盛り土をした団地だから液状化した」ということであれば,札幌周辺にも全国にもどこにでもある話で,このすべての安全性に疑問符がつくとなればたいへんなことになります。でも,里塚での液状化は,地下水がせき止められやすい形態だったことが原因であると特定できたならば,そのようなところだけに危険性を限定できます。

私の考察が正しいのかどうかはわかりませんが,原因究明のひとつのアプローチではあると思っています。

警戒区域指定と実際の土砂災害との関係

<警戒区域指定と実際の土砂災害との関係>

2018年7月の西日本豪雨災害では,土砂災害で深刻な被害が出ました。

土砂災害から国民の生命財産を守る(被害を軽減する)仕組みのひとつとして,土砂法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)があります。

この法律は,土砂災害を,急傾斜地の崩壊,土石流,地滑りの3つに分類して,土砂災害が発生すると予想されるところに警戒区域,特別警戒区域を指定することで,そこで生活する人に危険性の存在をお知らせし,避難行動や建物を強固にするなどの対策を促す(法規制による義務も含む)ことで被害を軽減しようとするものです。


この土砂法による警戒区域(イエロー)・特別警戒区域(レッド)の指定と,この度の豪雨災害で実際に生じた土砂災害がどの程度一致していたのか,ずれていたのかは気になるところです。

<区域指定と実被害>

<熊野町川角5丁目大原ハイツ>

この場所では住宅と住宅に住んでいた人に複数の重大な被害が生じました。

土砂法による指定は,平成29年3月9日にされていまして広島県HPの「土砂災害ポータル」で「1-2-3-61」で見ることができます。この場所では全壊17,大規模半壊4,半壊2の被害があったのですが,それはすべて特別警戒区域(レッド)の外です。特別警戒区域は指定されていましたが,団地の上流部の小さなところです。

被害と指定の位置関係は,

このようになっています。

土石流は2スジにわかれて谷を下ってきています。警戒区域(イエロー)に指定されていないところでも被害が出ています。

<矢野東7丁目梅河ハイツ>

この場所でも,住宅と住宅に住んでいた人に複数の重大な被害が出ています。

土砂法による指定はまだでしたが,平成30年5月17日に指定前の情報が「1-2-23-13」で出されています。

被害と指定(指定予定)の関係は,

このようになっています。団地の最も山側に特別警戒区域(レッド)があってその住宅が全壊したとともに,その下流部でも建物被害が出ています。

<広島呉道路の盛り土崩壊>

この場所では,平成30年3月29日に「1-3-541-6365」で指定されています。

でも,指定されていたのはその上流からの土石流で,崩壊したのは,広島呉道路の路盤を作る盛り土でした。道路を作るために施工された盛り土ががけ崩れを起こして,広島呉道路が通行できなくなったとともに,その下にあったJR呉線と国道31号線が使用不能に陥りました。

指定の状況は,

このようになっていますが,崩れたのは,広島呉道路の盛り土です。

<安佐北区口田南3丁目>

ここでも住宅と住宅に住んでいた人に重大な被害が出ています。

区域指定は,平成30年3月29日に「1-1-9-33」で指定されています。

被害と指定の関係は,

指定では,土石流が谷の出口から直線に北北西へ進むように想定されていますが,実際の土石流は,大きく左にカーブして警戒区域(イエロー)の外へと流れています。

これは,

土石流の流れの位置に小さな谷があって,その谷がカーブしており,谷に沿って流れたものと思われます。

<胆振東部地震の厚真町吉野地区>

平成30年北海道胆振東部地震で厚真町吉野地区で大規模ながけ崩れが生じてがけの下にあった住宅と住宅に住んでいた人に重大な被害が出ました。

この場所でも,北海道が土砂法に基づく区域指定をしていました。「1-3-12-1652」です。

がけの下にあった住宅のほとんどは警戒区域(イエロー)の中にありました。そのすべてが土砂に埋め尽くされて,土砂は警戒区域の外にまで及んでいます。

<感想>

警戒区域(イエロー),特別警戒区域(レッド)の指定と,被害との関係が,上記のようにずれていることをどのように考えたらいいのか。

特別警戒区域(レッド)では建物に深刻な被害を与えますが,警戒区域(イエロー)では建物への被害は大きいものではないと考えられていたはずです。

これは,土砂法上の用語の定義に「特別警戒区域」には建築物被害が書いてありますが,「警戒区域」には建築物被害が書いていないことからそのように解釈されるものです(この解釈が正しいと言っているのではありません。私がそのように解釈していただけです)。

熊野の団地では,レッドの範囲を大きく超えて土石流が到達して住宅を押し流しています。また,土石流は2方向から侵入してイエローにすら指定されていないところへも被害が及んでいます。

矢野の団地でも同様です。

広島呉道路の盛り土崩落は,がけ崩れの指定はされていませんし,そもそも,公共工事で造られた道路ののり面が崩落するという考えられない災害です(山からの土石流が盛り土崩落を誘発したとの指摘もあります)。

口田南の土石流は,指定のように直線に進んだりはしていません。その場の地形に小さな谷があって,それに沿って進んだ結果,イエローの外側に深刻な被害を生じています。

厚真町の事例でもイエローで深刻な被害が生じています。

土石流の規模の違いは,想定レベルの違いだったのかもしれませんが,土石流がカーブすることや2方向から来たことによってイエローですらないところに被害が出たというのは,指定する時の調査のきめ細かさの問題なのだと感じてしまいます。

これらの災害を受けて,土砂法の指定基準(指定の考え方や想定レベル)を見直すのかどうかは,私は知りませんが,上記のような食い違いは解消すべきと思います。ただ,「その結果,レッドをもっと広くしよう」という考え方には反対です。レッドになると建築物の構造基準が義務化されます。それをやむを得ないと考えるからこの法律は存在しているのでそれ自体を否定したりはしませんが,義務を課せるのであれば,レッドの指定はもっと自然現象に忠実で正確なものである必要があるでしょう。

<福山市駅家町のため池決壊>

福山市駅家町では,山の中腹にあるため池が決壊して下流にある住宅に流れ込み住宅と住宅に生活していた人に重大な被害が生じました。被災後の航空写真によると,

ため池の上流には,盛り土によるグランドが造成されていて,グランドの盛り土の土羽が崩れてため池に入り,ため池を破壊して流れ下ったように見えます。

この場所にも土砂法の警戒区域・特別警戒区域が指定されていました。指定状況は広島県HPの「2-1-2731-2」で見ることができます。指定されているのは,

 

グランドより上の地山の傾斜がきついためそのがけ崩れでグランドへ被害を及ぼすことの危険性です。実際に崩れたのは,グランドの盛り土のように見えますから,指定が指摘した危険性と被害を生じさせた事象は別物です。

このため,「指定により危険性が指摘されていたにもかかわらず,対策がされていなかった」との批判にはあたらないものと思われます。

逆に「崩れた盛り土の危険性を土砂法により指定していなければならなかったのではないのか」との疑問も生じますが,恐らくはのり面の基準を守って適法に造られたのり面なのでしょうから,土砂法指定に値する危険性を持ったものではなかったのだと思います。

以上は,のり面崩落(=ため池破壊)を土砂法指定という観点のみから見たものですが,これだけの被害を出している事象ですから,より深い原因の探求は必要でしょう。「なぜ,盛り土崩壊を予測できなかったのか(=崩落を防ぐ方法はなかったのか)」の探求はどなたかがされているものと期待します。

※ 航空写真は,国土地理院地図(電子国土Web)から入手したものです。