清田区里塚地区の液状化の原因についての考察【続編・札幌市資料を見て】1

北海道胆振東部地震により,清田区里塚地区で発生した大規模な液状化災害について興味をもって,当時,自分なりの想像でその原因を〈前回投稿〉と〈前々回投稿〉で考察してきましたが,発災時から2年を経過して札幌市による流動化対策工事が行われていて,その検討の過程が札幌市ホームページ上で公開されていますから,この公表資料で見えてきたことをまとめてみました。

私が,この里塚地区の液状化で興味を持っているのは,「なぜこの場所が大規模に液状化したのか」です。液状化の仕組みは解明されていますから

「なぜ液状化したのか」

その答えは,

「ゆるい砂質土で地中水位が高い地層に強い地震力が作用したから」

です。

学術的な答えはその通りなのですけど,私が欲しいのは,「なぜこの場所が,液状化する条件になっていたのか」です。「この場所は,谷筋を周囲の火山灰(砂質土)で盛り土したから液状化した」と言われるのですが,住宅団地は全国どこでも山を削って谷を埋めてできていますし,特に里塚周辺であれば盛り土に使われた土も周辺の火山灰(砂質土)だったはずで,里塚地区だけが特別に大規模に液状化したことの理由が説明できません。このページでは,できるかぎり

「なぜこの場所が,液状化する条件になっていたのか」

に迫ってみたいと思います。

参考にしました札幌市の資料は札幌市ホームページの「北海道胆振島部地震における地震被害対策」の「清田区里塚地区」で公開されています。このページでは4回の検討会と5回の地元説明会(うち1回は工事説明会)の資料が公開されていまして,これを読み解くことで液状化の様子や地盤の性状を見ることができます。

里塚で起きた液状化現象

里塚で起きた液状化現象は,これまでには見られなかったものであることが語られています(第1回技術検討会議事録2ページの「発生メカニズムについて」)。

液状化した砂は液状化したところの直上(または,その付近)で噴砂となって流出するものであるのに対して,里塚では斜面地の最も低いところへ集中して噴出しています。

このことを模式図で分かりやすく示しているのが,第2回説明会資料の25ページです。

図01液状化の模式図

液状化しなかった地下水位より上の盛り土が一定の強度を保っていて,地下水位より下の液状化した盛り土が上へ噴出することができず,傾斜地であったため下流側の非液状化層の薄いところへ集中して噴出した現象を分かりやすく示した図です。

液状化の現象は,科学的にかなり解明されていまして,液状化による沈下量も予測できるものなのですが,予測式(Dcy値)を大きく上回る沈下が生じてしまったのは,液状化した土そのものが下流へ逃げて行ってしまったことによるものです(第1回技術検討会2ページに関連した発言あり)。

で,この現象について,私は名前をつけたいです。液状化として語られていますが,液状化の中でも特殊なケースなんです。ですから,「特殊液状化」とか「液状化typeSATODUKA」というような通常の液状化ではないのだということがわかる名前をつけたいのです。で,その名前ですが,

「液状化による地層内地滑り」

で,どうでしょうか。里塚で起きた現象は,土が下流へ流されていく地滑りに近いものです。通常の地滑りは,せん断耐力を失った面より上の土が表層とともに下流へと移動するものですが,ここでは液状化しなかった表層部は一定の強度を保ち続けたため下流への移動はわずかで,沈下のみをしています。例えるなら,氷枕の中の水が口のところで抜け出してしまって頭が下がっていくような感じです。地中内の液状化によって耐力を失った部分が氷枕の水で,それだけが下流側へ移動して噴き出した現象なのです。ですから,地層内の液状化したところだけが地滑りしたという意味で「液状化による地層内地滑り」なのです。

次の投稿へ続く

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