公共建築工事積算基準の改定(平成28年12月)

<公共建築工事積算基準の改定(平成28年12月)>

国土交通省の「公共建築工事積算基準」が改定されています。これまでは平成19年に出されたものでしたが,平成28年12月に改定されました。改定内容は「こちら」です。「等」と「原則として」が加わっただけです。

また,

公共建築工事共通費積算基準」も改定されています。これまでは平成26年に出されたものでしたが,28年12月に改定されました。改定内容は「こちら」です。「公共建築工事積算基準」で「付加利益等」の「等」がついたことに伴って「等」の内容が,法人税等,株主配当金,役員賞与,内部留保金,支払利息などの営業外費用と規定されて,一般管理費等の率も大きくなっています。

また,

公共建築工事積算研究会参考歩掛」も改定されています。

工事費の積算については〈工事費積算〉で解説しています。

巨大物流倉庫の火災と面積区画

<巨大物流倉庫の火災と面積区画>

2017年2月16日に起きた埼玉県の巨大物流倉庫での火災は10日以上燃え続けるという大規模な火災でした。3階建て約7万㎡の倉庫のうち60%程度が焼けたそうです。

巨大な倉庫がひとたび燃え始めると消すことがどれほど困難かが示されました。小さな建物の火災を消すときには外壁にある窓から放水すれば消火できますが,巨大物流倉庫は外壁の開口部が少ないですし,あったとしても,窓から放水が届く範囲は限られていて,建物内部で燃えているものを消すためには,消防隊が燃え盛っている建物内部の奥深くまで進んで放水しなければいけないのですが,安全確保上そんなに奥深くまで行くことなどできません。

火災が燃え広がるのを抑止するための基準があるはずで,これがどうなっているのでしょうか。

倉庫の面積区画

にまとめました。巨大な倉庫の面積区画をどう適用するかは,「用途上やむを得ない場合」に該当するかどうかということになります。これは,ある意味,あいまいな概念で,何を保管するか,どのように運用するかにかかってくることです。結果を見れば,10日以上燃え続けたのですから,区画を含む安全対策が必要だったといえるでしょう。

この執筆時点(3月9日)でその建物に区画がされていたのかどうか私は知りません。今後原因の究明や対策が発表されるでしょうから注目したいと思います。

<4月13日追記>

4月13日の報道で,防火戸の多くが作動しないか,倉庫の内容物(保管物やベルトコンベアー)などに邪魔されて閉鎖しなかったとされています。また,同日の日経アーキテクチュアーには,各階平面図と防火区画の位置が記載してあって,1500㎡以内ごとに防火区画が設定されていたことがわかります。

32年前の粗雑工事で和解

<32年前の粗雑工事で和解>

2月4日の地方新聞に,1980年に建設された建物の粗雑工事で工事をした建設会社と建築主との間で和解が成立したことが報道されています。

報道によれば,2012年にこの建物を耐震診断したところ,設計とは違う工事がしてあって,余計な耐震補強が必要になり,その補強工事分を請求していたもので,それについて和解が成立したそうです。

和解金額は公開されていませんからわかりませんが,建設会社が何割かは支払わないと成立しませんからそうなんだと思います。

違う工事とは,鉄骨の柱はり接合部の溶接方法が設計とは違っていたとされていて,その結果,強度が低下していたとなれば,はりフランジの溶接が完全溶け込み溶接でなければいけないところが隅肉溶接になっていたことが想定できます。でも,さすがに,そんなことはしないと思うのですけど,それ以外には思いつきません。

建設会社は,時効による損害賠償責任の消滅を主張していたようですが,最終的に和解を選択しています。

世の中は,30年も前に建設された建物の粗雑工事の責任が問われるんですね。怖いことです。

<参考>

建築物:広島市西区の㈱アスティの本社ビル

施工者:三井住友建設

裁判での請求金額:約3億7000万円(和解金額は報道されていない)